今回は、ディズニー映画『モアナと伝説の海』にからめて、ディズニー映画について書こうと思います。
ディズニーの映画は世界中で人気です。
『アナと雪の女王』のテーマソングも、世界中のいろいろな言語で歌ったのをミックスしたバージョンがユーチューブで聴けて、いかにさまざまな言葉に翻訳されているかということが分かります。
「ありのままの姿見せるのよ♪」で有名な例の歌、ロシア語版ではこうです。
Отпусти и забудь. Что прошло - уже не вернуть.
アトプスチー・イ・ザブーチ。シトー・プラシロー・ウジェー・ニ・ヴェルヌーチ。
「手放しなさい、そして忘れなさい。過ぎたことはもう取り返せない。」
歌詞の内容は全体として、「私はこれから女王になるのだ。過去のことは捨てる。女王になるのだからどんな困難にも負けないよう強くなってみせる」という、たくましいものです。
* * *
もちろんロシアでもディズニーの映画はとても人気です。新作映画は毎年上映されますし、
私がロシアに滞在していたころも、『美女と野獣』のミュージカルを見にいきました。
しかし、ロシアではディズニーの映画が嫌いな人が一定数いるようです。
ロシア人に聞いてみても、ソ連時代はディズニーは公開されていなかったといいます(ただし、ミッキーやミニーのTシャツはあったので、ミッキーマウスモノだけは許可されていたかも)。
ディズニーはもともとアメリカのものであり、そこにはアメリカのあらゆる悪(資本主義、人間の欲望、堕落などなど)が現れているものなので、ソ連では公開されていなかったのではないか...と思うのですが。
ただしソビエトでは、ディズニーに追いつけ追い越せと言わんばかりに、質の高いアニメーションが作られていましたし、どのようなものがあったかはこのブログで過去にご紹介しました。
さて、ソ連が崩壊した現在でも、ディズニーを批判する人というのはいるわけです。
現在、『美女と野獣』の実写映画が公開されていますが、それが賛否両論を呼んでいます。
なんでも、そこにはゲイの男性(と思われる人物)が登場するために、ロシアでは議論が巻き起こったのです。
ロシアでは同性愛者は非常に嫌われていて、性的少数者への差別は公然と行われています。
最近では、青少年に対し同性愛のプロパガンダを禁止する法律が施行されたこともあり、
この『美女と野獣』を公開するかどうかでも、だいぶもめました。
この件をきっかけとして、インターネット上では、ディズニーの悪口を言う人たちも増えて、
ディズニー映画には、ロリコンをはじめとして様々な「けしからん」形の恋愛が描かれている、と非難が現れました。
ロシアにいる私の友達は、この映画を見に行きたいようですが、もしかしたら子供なんかは劇場に入れてもらえないかもしれないなどと言っていました。後で聞いた話だと、子供も入らせてもらえるそうです。
ロシアで同性愛者が嫌われている原因には、宗教的な理由も歴史的な理由もあるので、かなり根が深い問題です。
(市川)