2018年7月13日金曜日

イワン・クパーラ

ロシアでは夏も盛りの夏至(七月頃)に「イワン・クパーラ」というお祭りがあります。

イワンというのはロシアではよくある名前で、英語だとジョン、ドイツ語だとヨハン、フランス語だとジャン、スペイン語だとファンですが、
このお祭りでいうイワンとは、洗礼者ヨハネのことです。
イエス・キリストに水を浴びせて洗礼の儀式を行った人物です。イワン・クパーラは、「水浴びさせたヨハネ」という意味です。

ですが、これはロシア人が、キリスト教に改宗するずっと前からあったお祭りです。
空の神様に祈りを捧げて、豊作や健康を祈る行事でした。
キリスト教が入ってから、どういうわけか洗礼者ヨハネの伝説と、この夏の祭りが結びついて今のような形になりました。

イワン・クパーラでは、水浴びをしたり、キリスト教のお坊さんと一緒に祈りの言葉を唱えたりります。

イワン・クパーラの過ごし方は地域差があるようですが、何日かにわたって行うこともあります。
前日の夜は鬼や悪霊や悪魔がうようよ出て来るから、眠らずに身を守らなくてはならないとか、
シダの花が咲いている地面を掘ると、宝物が出てくるなどといった伝承があります。

しかし、なんといっても代表的なのは、たき火の上をジャンプする夜のイベントです。
誰が一番高く飛べるか競い合ったり、二人でペアになって手をはなさずに飛ぶチャレンジをしたり、盛り上がって楽しそうです。

が、やっぱり危ないことに変わりないらしく、
先ほどもこのブログを書くために、「イワン・クパーラ」とロシア語で検索してみたら、六歳の少年が火に落ちて死んでしまったというニュースが出てきました。

イワン・クパーラといえば、小説家のゴーゴリが『イワン・クパーラ前夜』という小説を書いています(このブログでも紹介しました)。
(市川透夫)

2018年3月20日火曜日

『コサック村のクリスマス』(ゴーゴリ『降誕祭前夜』)


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「コサック村のクリスマス」
Ночь перед Рождеством
作:N.V.ゴーゴリ
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ロシアの文豪ゴーゴリの短編『降誕祭の前夜』を翻訳し、挿絵をつけて本にしてみました。
作業に時間がかかりクリスマスをとうに過ぎてしまいました。



舞台はクリスマス・イブのウクライナの村。
一匹の鬼がやってきて、空にうかんでいる月を盗むところから始まります。

ウクライナの村

ウクライナの娘

この物語はストーリーが複雑なので、内容を手短に書くのは難しいです。
しかし、鬼や魔女、妖術師が引き起こす不思議な展開、ウクライナのゆかいな村人たちは、魅力的です。

魔女と鬼

そして物語の山場で、村からロシアの首都までの何百キロを空を飛んでいくというスケールの大きさもあります。

ロシア帝国の首都ペテルブルグ。エカテリーナ女帝の宮殿(現在のエルミタージュ美術館)。

今でもロシアでは絵本として出版されていますし、モスクワの有名な人形劇場では、子供向けに上演されています。

ゴーゴリといえば『鼻』と『外套』が有名ですが、こんなわくわくする楽しい話も書いてたんですね。

この話は『ディカーニカ近郊夜話』という短編集の中の一つです。
今までも個人的にこの中の話を絵本にしてきましたが、今回は三作目です。
日本では大きな本屋さんに文庫本がひっそり置いてあるぐらいです。これではもったいないと思い、絵本化する試みを続けています。
量産する体制が整えば販売も考えています。

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(市川透夫)