2015年9月30日水曜日

ラーメンスコエは楽しい町

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ラーメンスコエは楽しい町
Раменское
 
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 ロシアに旅行した際の定番は、モスクワや、第二の都市ペテルブルグです。これに加えて、モスクワ周辺に点在する「黄金の環」と呼ばれる古都群 ― セルギエフ・ポサード、ウラジーミル、スーズダリ、ロストフ・ヴェリーキーなどなど...を見て回るのが、通常の旅行者のコースです。

 ですが今回は、そんな一般の旅行コースとは全くはずれたマイナーな町を紹介しようと思います。

 それが首都から42キロ離れた、ラーメンスコエ市です。(※ラーメンとは無関係)

 あらかじめ断ると、この町については、情報の多くを『路上のミュージアム~モスクワのモニュメントが秘めた物語~』(群像社)に頼っているので、これから書く旅行記も内容がかぶってしまいますが、それでもこの町は、旅行や留学などでロシアを訪れた際にお勧めできるスポットなので敢えて紹介しようと思います。

 首都の中心部から42キロ離れたこの郊外の町は、東京でいうなら三鷹や立川といったところ。ロシアにおいても、日本でいうドーナツ化現象が起こっているようで、学校や仕事場は街の中心部でも、住む場所は郊外というケースが多いです。ともかくこの郊外の町ラーメンスコエは静かですがきれいで、のんびりした気持ちでお散歩できます。

 駅を降り、街を数分歩いて行くと、まず目につくのはこのようなペイントがされた建物。

マクドナルドもある
(写真は筆者撮影)

 建物に、虹が描かれています。これらは一般の住民が住むアパートですが、あちこちでこのように虹、ないしは虹をイメージしたカラフルな色どりで塗られています。

 そうでない建物でも、壁画が書いてあったり、薄いピンクや緑など、無機質な日本の住宅とはちがうかわいらしさがあります。

 さて、この街にはもう一つの特徴があります。それは、通りを歩くとしばしば見かける、銅像。


ロシアマニアにおなじみ
ロシアの代表的なアニメ、チェブラーシカと仲間たち。この町にはほかにも『プロストクワーシノ村』や、『くまのプーさん』といったアニメの仲間が、銅像となって町のどこかに立っています。アニメ以外にもプーシキンの詩に登場する『学者ネコ』などマニアックなのがあります。面白いモニュメントを探すのも、ラーメンスコエ散策の楽しみです

 都会の賑やかな雰囲気を浴びたり、観光名所を回って動きまわることに疲れたら、このような静かな町を訪れ、のんびり写真をとりながら歩いてみるのも良いと思います。

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◆ラーメンスコエへの行き方◆

モスクワ市内のカザン駅(Казанский вокзал)から、エレクトリーチカと呼ばれる郊外列車に乗り、ラーメンスコエ駅(Раменское)で降ります。所要時間は約1時間14分、一時間に2、3本ほど電車が出ています。往復切符は2015年当時160ルーブル(550円程度)でした。
(筆者:市川)

2015年9月27日日曜日

ロシアのキングギドラ:ズメーイ・ゴルィーニチ

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ズメーイ・ゴルィーニチ
Змей Горыныч
 
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 ロシアのおとぎ話に登場する最も恐ろしいかもしれない怪物が、ズメーイ・ゴルィーニチЗмей Горыныч)です。「蛇」「竜」「ドラゴン」などいろいろな訳がありますが、今回はロシア語の単語をとって、簡単に「ズメーイ」と呼ぶことにします。

 その名前が、現代ロシア語のヘビ(ズメヤー)の元になっていることからも分かるように、蛇の体がベースなのですが、そこに手足と羽が生えていて、頭は三つ
 

 こんなのが火を吹いてくるわけで、それだけでも恐ろしいのですが、体が蛇であることを考えると気持ち悪くもあります。

 形としては日本の映画に出てくるキングギドラとそっくりなので、さしづめロシアのキングギドラといったところ。ロシア人から見ればキングギドラが日本のズメーイですが。しかもズメーイの方が歴史が古い。

 ズメーイ・ゴルイーニチはしばしば、おとぎ話の中では、ヒロインをさらう悪役として出てきます。一体、お姫様をさらって何にしたいかというと、たいていは美しいお姫様をお嫁にとるか、女性の柔らかい肉を食べてしまおうという目的です。どちらにせよ、こんな気持ち悪い生き物の妻になったり食べられたりするのですから、不愉快極まりない。

 ちなみにお姫様を連れ去るだけあり頭が良く、言葉を喋ります。ガオー!だけではないわけです。

 というわけで王子様も負けていられず、お姫様を救いだすため、ズメーイをやっつけに旅立ちます。

 さて王子様も、このズメーイを倒すために大変な奮闘を見せます。王子様がズメーイをやっつける昔話は複数のバリエーションがありますが、ときに一匹倒しただけでは終わらないケースがあります。例えば、最初に頭が三つのズメーイをやっつけたかと思うと、今度は頭が6本あるズメーイが現れ、それをやっとやっつけたかと思いきや、次には頭が9本あるズメーイが出てきたり、とここまでくると思わず笑ってしまいますが、一匹であれ複数匹であれ、晴れてズメーイをやっつければ、王子様はお姫様を救出し、めでたく二人は結婚するというハッピーエンドが待っています。

 こうして、王子様がお姫様を助けるという昔話の大筋を見てみると、テレビゲームのドラゴンクエストをはじめ、様々な冒険物語と一致します。現在でも、さまざまな冒険物語がありますが、大本をたどっていくと、どこかの国の昔話に行きつくわけです。やはり人類の創作物語は、フォークロアに起源があるのか、などと考えさせられます。

 ちなみに頭が複数あるヘビと言えば、思いつく限りではこのズメーイやキングギドラの他に、ギリシャ神話のメデューサや、日本神話のヤマタノオロチがあります。こういう生き物を見るたびに思うのは、もし複数ある頭が、たがいにケンカを始めたらどうなるのかなということです
(文:市川)

2015年9月22日火曜日

不死身のコシチェイ

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不死身のコシチェイ
Кощей-бессмертный
 
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 不死身のコシチェイКощей бессмертный)は、ロシアのおとぎ話でも、バーバ・ヤガーに並ぶ代表的な悪役です。バーバ・ヤガーは鬼ばばあということで女性でしたが、こちらは男性の妖術師ということで、さしづめ鬼じじいです。

 コシチェイという名前が、ロシア語の骨(コースチ)を連想させることから、しばしばドクロの形で描かれます。ドクロでないとしても、骨の形が分かるぐらい痩せた醜い姿をしているということで大方のイメージは一致します。

『不死身のコシチェイ』V.ヴァスネツォフ作
 
おとぎ話のコシチェイは、王子様から、お嫁さんを連れ去らってしまいます。というわけで、王子様はお嫁さんを取り返すべく、コシチェイを退治しにいくわけです。

 さて、どうすればやっつけられるでしょうか。その秘密は、物語の中で次のように説明されます。

 「海の向こうに島がある。島には一本のカシの木が生えている。そのカシの木の下には箱が埋まっている。その箱の中にはウサギがいる。ウサギを殺すと中からアヒルが出てくる。アヒルを殺すと卵が出てくる。その卵の中には針がある。その針の先に、コシチェイの命が入っている。」

 コシチェイは妖術師。普通に剣で体を切っても殺せません。コシチェイの命は、別のところ ― 針の先 ― にあるからです。

 箱→ウサギ→アヒル…という入れ子構造になっているあたり、ロシアの人形マトリョーシカみたいです。別に関係はありませんが。
 「針」「ウサギ」などという物体の選び方も、凡人の発想を超えている(と私は思うのですが...)。  
 とにかく、昔話を紡ぐ人たちの自由な想像力を感じさせます。

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不死身のコシチェイが登場するアニメ、『カエルの王女』
カエルの王女はロシアでは学校の教科書に載るくらい有名な昔話です。

https://www.youtube.com/watch?v=OaQRxJTq_8c
(文:市川)