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『3びきのくま』
Три медведя
レフ・トルストイ
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これはロシアの童話ではありません。
ロシアの絵本を紹介するというブログで、北国らしいクマの登場する物語で、小説家のレフ・トルストイの名前まで出しておきながら、ロシアの童話ではないと断ってしまうのも変ですが、実際のところこれはイギリスの童話で、スラブ人の作品ではありません。
もともとこれはイギリスの作品。トルストイは、これをロシア語で書き直したのです。内容はほとんど同じですが、主人公の女の子が「シルバー・ヘアーSilver-hair」という名前だったのを、ただの「女の子」という風にしたり、多少のアレンジがあります。こういうのは、翻訳というよりは「翻案」というふうに呼ばれます。
トルストイは作家だけでなく社会活動家でもあり、農民の子供のために、学校も開いていたように、子供の教育には熱心でした。少年少女のために寓話や童話をたくさん書き、その中の一つにあったのが、この「3びきのくま」です。
日本ではレフ・トルストイの手によるこの翻案が先に出版されたために、ロシアのお話として有名になったということです。
ユーリー・ヴァスネツォーフのきれいな絵がついたこともあり、絵本は1962年の発行から今でも読まれています。ヴァスネツォーフは、日本でも絵本コレクターの中で人気の画家。作風は写実をだいぶ離れています。動物が丸っこく愛らしく描かれています。絵の中に、民俗風の模様をあしらった、デザイン化した部分もあって、見ていて楽しいです。
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『3びきのくま』 トルストイ作、ヴァスネツォフ絵、小笠原豊樹訳。福音館書店、1962年。
イギリス版はこちらで読むことができます。
『3びきのくま』 イギリス民話、いもとようこ文・絵。金の星社、2006年。
(筆者・市川透夫)
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