ではクマのことをロシア語でなんというかというと、「медведьメドヴェーチ」という。これは「ハチミツ」という言葉から来ている。そういえば「クマはハチミツが大好き」というイメージは確固たるもの。クマのプーさんもハチミツの壺を大事そうに持っていた。自然の中にいるクマが、ハチミツを舐められる機会はそうないけど。
今のロシアの大統領はメドヴェージェフだけれども、この苗字もメドヴェーチという単語から来ている。日本でいうなら、さしづめ熊田さんといったところ。
外国人には、ロシアといえばクマというステレオタイプがある。昔は新聞の風刺画などで、ロシア人は決まってクマの姿で描かれていた。体が大きくて毛深いところがロシア人のイメージと一致したのだろう。そして実際に街をあるいているのも、クマみたいに大きくて毛深い大男...
外国人だけでなく、ロシア人自身にも、ロシアといえばクマというイメージはあるみたいで、クマはあちこちでイラストやキャラクターのモチーフになっている。
1980年のモスクワオリンピックでマスコットキャラクターになったのは、クマのミーシャ。実は、クマがミーシャという名前になるのは、犬がポチという名前になるくらい平凡なネーミングである。おそらくメドヴェーチと同じくMの音で始まっているため、クマの名前らしく聞こえるのかもしれない。この年のオリンピックは、ソ連のアフガン侵攻に日本が反対して、出場は辞退しているので、日本人にとってはキャラクターと共になじみの薄い大会となった。
モスクワ市内・オリンピック公園に あるくまのミーシャの銅像。 |
2014年の冬のソチオリンピックは、ホッキョクグマがキャラクターになっていた。ほかにもウサギとヒョウがいた。ただこのときは、個別の名前はつけられていないようで、ただウサギとかヒョウとかホッキョクグマと呼ばれていた。
毎年夏になると、東京にはロシアのボリショイ・サーカスが公演にやってくる。そのときの公式キャラクターは、クマの男の子と女の子で、それぞれミーシャとマーシャという。
というわけで、ロシアといったらクマといっていいくらい、クマはロシアのイメージと結びついているが、おとぎ話のなかにもクマはたいへんよく出てくる動物の一つである。
おとぎ話の中に出てくるクマは、たいていは乱暴者で、人間からもほかの動物からも恐れられている。ときどきキツネみたいなずるがしこいやつに惑わされたりするけれども、力においては森の中で最強である。クマが物語の最後にでてきて、何もかもメチャメチャにして話を無理やり終わらせるようなこともある。
ロシアの辞書でメドヴェーチの項目を見ると、第一義には「体が大きく獰猛で、毛の長い雑食性の動物」とあり、第二義には「不器用で、動きの鈍い人」という説明が書いてある。力はあるのだけど、その力の扱い方が雑だというこの説明は、キツネのような知恵やすばしっこさを欠いた、昔話のクマの姿に重なる。
日本語でも出てる代表的な絵本に、「3びきのくま」や「マーシャとくま」がある。最近のロシアでは、「マーシャとクマ」というCGアニメも出てきて(日本で出ている絵本とは別の物語)、相変わらずお話の世界では大活躍のクマ。
一個一個の作品について書かなければいけないことは多いけれども、それは次回に。
(筆者:市川)
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