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イーストラ ~もう一つのエルサレム~
Истра. Новоиерусалимский монастырь
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ノーヴィ・イエルサリーム(新しいエルサレム)という変わった名前の場所があります。ロシアのニコン総主教という人物が、エルサレムをもう一つ作ろうという目的で修道院を建てたのが始まり。
ロシアの教会といえば、モスクワのワシーリー大聖堂や、ウラジーミルのポクロフ・ナ・ネルリなど、デザインはいろいろでも、それぞれがどことなくロシアっぽい感じを出しています。
しかしこのノーヴィ・イエルサリームの修道院は、どこか異国風です。色遣いにしても形にしても装飾にしてもちょっと趣が違う。
これを建てるために、くだんのニコン総主教というお坊さんは、エルサレムの聖堂を真似するために、当地に使者を遣わしました。
エルサレムといえば、イスラエルの首都であるとともに、キリスト教、イスラーム、ユダヤ教の三つの宗教の聖地。
総本山の名を冠した修道院を建てるのは、かなり壮大な話に見えます。しかし、ロシアにはこの時、「モスクワは第三のローマ」であるという考え方がありました。世界史には、ローマ帝国とビザンツ帝国という、キリスト教を信仰する二つの大きな帝国があります。しかし二つとも滅びてしまいました。
一方、正しいキリスト教を守るロシアは、滅びることなくこれからも存続しつづけるであろうと考えられました。モスクワは、ローマを継承する、第三番目の帝国なのです。こうなるとロシアはもう、たんなる辺境の国などではない。正統なイエスの教えを信じる、大きな強い国となるわけです。
さて、そんなロシアの「イエルサリーム」は、モスクワから電車で一時間半のイーストラという田舎町にあります。
どこかほかの教会と違う気がする... |
どこもかしこも修理中。 堂内も完成しておらず、聖障(イコノスタス)の絵は取り外されたまま。 |
修道院敷地内はこのころ、全面的な修理中で、聖堂内も工事が未完成。その上なぜか警備員が歩き回って、トランシーバーで連絡を取り合ったりしているので、あまり神聖な場所という雰囲気がありませんでした。
途中で、一本の通路が奥に向かって伸びているのが見えました。通路の先には小部屋があり、そこに向かって人が列を作っていました。どうも、この小部屋の中には一人ずつしか入れないようで、順番にゆっくり列が進んでいきます。そして中に入った人は、一点を見つめて十字を切っている。一体何があるのでしょう。
私も列に並び、神聖な場所にいるという緊張から少し硬くなりながら、この小部屋に入ってみました。しかしその先には何もありません。仕切られた先に、棺桶のおけそうな空洞があるのですが、棺桶があるわけでもありません。聖人の肖像画が飾られているのでもないのです。あれは何だったのでしょう。
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◆ノーヴィ・イエルサリームの修道院への行き方◆
モスクワ・リーシスキー駅(Рижский вокзал)から郊外列車エレクトリーチカで「ノヴォイエルサリームスカヤ」(Новоиерусалимская)へ。一時間半ほど。そこから徒歩で街道を歩いていくと、丘の上にある。隣には木造建築公園があって、木造の風車小屋などがみられる。
※郊外列車エレクトリーチカの時刻表はよく確認しておくことをお勧めします。目的地によっては、線路が分岐しているなどで思ってもいない方向に電車が行く可能性があります。このイーストラに行く場合は特にそうです。
時刻表は、検索サイトで「расписание Москва Истра」などとキーワードを打つと調べられます。
(写真と文:市川)
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