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セルプホフ ~暗闇の中で見た修道院~
Серпухов
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セルプホフ行きは完全な失敗で、なぜかというと電車に乗り遅れた。午前の電車に乗るつもりが間に合わなかったせいで、次の電車までの2時間を待たなければならなかった。その間はショッピングモールをうろついて、ユニクロのモスクワ支店を見たりしながら時間を潰す他なかった。
郊外列車エレクトリーチカは、昼間は大きな休憩時間があるので、乗るときは時刻表をよく確認する必要がある。
これと関係あるかないか、ロシアでは昼休みをとっている施設が多い。レストランも昼の間だけ閉まっていることがある。
それは、日本やヨーロッパが正餐(ディナー)を夜に摂るのに対し、ロシアでは昼に行うことと関係があるのかもしれない。あんまり間違っていると恥ずかしいので、断言するのはやめておく。
そういうわけで、電車で二時間もゆられ、過ぎていく時間に憂愁を覚えながら、セルプホフに到着した。駅に降りたころには、もう夕方の4時。
さてこの後も大変である。歴史地区まで
行きたいわけだが、セルプホフは比較的に町が大きいので、車などで移動しないと、歩く距離が非常に多くなる。だが私は電車できたぐらいなので車など持っていない。だから、歴史地区まではバスでの移動である。
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駅前のお店。正直なところ古くて汚い場所が多いが、
その古くて汚いところにどこか懐かしい感じがある(失礼)。
こういうよくある光景がずっと残っていてほしい |
そしてバスがなかなか来ない。日本もそうだが、田舎のバスは一時間に一本来れば良い方である。実際このときは、一時間待てば来る、「良い方」のバスだったわけだが、それでもバルに乗り込む頃には、すでに夕方五時。ロシアの冬は、一日が非常に短いので、4時にもなれば暗くなりはじめ、5時にはすっかり夜である。
こうして、バスに乗りながら暗くなった外の景色を、悲しい気持ちで眺めていた。けれども、せめてセルプホフに来たからには、修道院は見てみたい。
そういうわけで修道院に着いた。
さて空は真っ暗であるから、修道院もよく見えない。わずかに、雪の照り返しでうっすら白い壁が見える。
古い言葉で「蛍雪の功」というのがある。蛍の光や、窓の雪の光で、夜も勉強に励んだ人の成功を指す成句だが、実際に雪によって光が生じるのを、これほど実感したのはこの時ぐらいである。
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奥にうっすらと、修道院の壁や、尖塔が見える。 |
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デジカメを夜景用に設定するも、手がブレるせいでまともに撮れない。 |
ところで今まで書かないでおいたが、冬のロシアだからえらい寒さである。バス停で一時間待ったなどと書いたが、その間も風吹の中を待っていたわけである。電車やバスの時間をよく見ておかないと、こんなところでも大変な被害を受ける。
修道院も外は寒い。私は、お寺に対する敬意を忘れずに中を見学する。すると天国かな、非常に暖かい。ロシアは建物の中を暖めるにかけては素晴らしい。
その時は夕方の祈祷が行われていた。セルギエフ・ポサードで見た様な、祈りの言葉を聞きながら、信徒たちの十字を切る姿を見ていた。
祈祷は長く続いたが、私は途中で外に出た。暗闇の中にそびえる修道院。街灯は一つもない。中世のロシア人も同じくらいの暗闇の中で、教会の白壁や丸屋根を見上げていたろうか。
つまるところ、私のセルプホフ行きは、暗い中でこの修道院を見たという話に尽きるから、いささかも町の魅力を理解できず、また伝えることもできないのが遺憾ではあるが、しかし旅行先として楽しいのはたしかなので、ここに記事をものした次第である。
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セルプホフへの行き方
モスクワ・クールスク駅から郊外列車エレクトリーチカでセルプホフへ。所要時間一時間半~二時間。