2015年12月27日日曜日

12月の出来事

12月の初めは、東京ロシア語学院で学院祭がありました。学生によるロシア語劇の公演、バラライカのコンサート、ロシア料理のお店や、ロシアのおみやげの販売などで、ロシア一色でした。
この東京ロシア語学院では、この他にも全日本ロシア語コンクールなど、ロシアに関連する催しをいろいろやっています。

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そして同じ頃、東京にはウクライナから舞踏団が来日していました。舞踏団は小麦を意味する「ゼルニャトコ」(Зерняткоという名前です。下町の方々のカンパや募金で来日が実現したとのこと。
私も公演を見にいきました。
(踊りの様子はYou tubeで見られます)

ウクライナはニュースなどをはじめ、近年注目を集めている地域です。長い間ロシアの一部であったために、独立に対する思いは強く、かなり過激なナショナリズムを発揮します。

実際のところ、ウクライナは、古都キエフや、踊りが有名なコサックたちなど、面白そうなものがいっぱいある国です。

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さらに、12月26・27日は、ロシア語劇団「コンツェルト」の公演でした。コンツェルトは、早稲田や東京外大の学生からなる劇団で、ベラルーシ出身の講師の指導下、公演を全てロシア語で行っています。舞台では字幕もつくので、ロシア語が分からなくても楽しめます。今回はV.ソローキン作『ドストエフスキー・トリップ』を上演しました。

探してみると、ロシアや旧ソ連地域に関係する催しはいろんなところでやっているのが分かります。
(文 市川透夫)

2015年12月12日土曜日

ロシアのクリスマス

12月になりました。街や通りがクリスマスで飾りつけされていて、毎年この時期に感じるような特別な気持ちを覚えます。
24日は恋人と過ごす方も多いと思います。恋人がいなくて焦っている人もいれば、24日限定で彼女をやるのでデート相手を募集中というのをツイッターで見かけます。

ちなみにロシアでは、カトリックと違うロシア正教があるため、イエス・キリストの生誕祭は1月7日にお祝いします。また、年末やおおみそかの休み、お正月、クリスマスは一体化していてます。日本では25日にクリスマスが終わると、大急ぎでお正月の準備が始まり、和風の色が濃くなりますが、それと比べると、ロシアの方がクリスマスの雰囲気が長く続くような感じがします。

◆ツリー◆

クリスマスツリーの飾りつけについては、以前クリンを旅行したとき訪れた「ツリーの飾り博物館」で少し触れています。

◆クリスマスの街並み◆
マーケット。

新アルバート通りのビルに映し出されたツリー。
ルビャンカ駅にある、「中央こども百貨店」。
ソ連時代からある歴史ある店で、しばらく修理中だった。
2014年の12月までにオープンする予定だったが、
修理は大幅に遅れ(ロシアではよくある)、2015年になってついに開店。

◆クリスマス&ニューイヤー・ショー◆

お正月やクリスマスには、多くの劇場やサーカス、コンサート会場で、新年の特別公演をやっていました(こうした公演は俗に『ヨールカ』といわれます)。

特に劇場では年末は「くるみ割り人形」が定番で、人気の演目です。この時期のチケットは早めにとっておかないとすぐに売り切れてしまいます。

オリンピック公園で開かれた、「アラジンと魔法のランプ」。
アイススケートによるショー。
実際にクリスマスショーやニューイヤーショーに行ってみると、家族づれの人たちで賑わっています。

『ヨールカ』では、会場でお菓子の詰め合わせのプレゼントがもらえるので、子供たちにはとても楽しいイベントとなります。

これは、ソ連時代にクレムリンの宮殿で開かれたヨールカの、お菓子の詰め合わせプレゼントです。


24日のクリスマスまでに恋人が見つからなくても、7日までにはうまくいけばロシアのクリスマスを祝えるのでは、と愚にもつかないことを思ったりします。
(文 市川透夫)


2015年11月25日水曜日

外語祭終わりました。

おかげさまで外語祭は無事終わりました。
ぞうのあしが企画する「*ロシア絵本館*」は、547名以上の方に訪問していただき、朗読会も、こちらの予想を上回る多くのお子さんや、大人の方々に聴いていただきました。
(※数え漏れた方が多いので、実際にはもっといます)

さて、私としては初めてだった朗読会ですが、当初の予定では、ロシアの昔話に加えて、アントン・チェーホフの短編小説を朗読する予定でした。しかし実際には、お子さんが多くいらっしゃり、また文化祭の雰囲気からいっても、チェーホフの短編が、難しい&重い気がしました。そこでチェーホフは中止にし、昔話や童話を一回の会で二編読むということにしました。

具体的には
「大きなかぶ」「てぶくろ」「マトリョーシカちゃん」「ゆきむすめ」「しずかなおはなし」「マーシャとくま」です。
(いずれも福音館書店。)

この中でも、みんなで楽しめたと思うのは、「マトリョーシカちゃん」「大きなかぶ」でした。大きなかぶといえば、ロシアものに限らず、日本で出版された絵本の中でも堂々一位のロングセラーで、やっぱりそれだけのことはある、という感想です。


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個人的な趣味から、エヴゲーニー・チャルーシンという方のイラストの本を多く展示しました。かわいいという感想が多く出ました。

絵本の展示の中でも、「クマのプーさん」にびっくりした方が多いようです。日本ではすっかりディズニー版のプーさんが定着していますが、ロシアではまったく違うイラストのプーさんが知られているのです。初めて見るとなんだこいつ、と思います。

ロシア人の方にも足を運んでいただきました。展示品の中には、子供時代に読んだ本もあったようで、懐かしく思ったそうです。また、ロシアの様々な話が日本語に翻訳されているのも驚いたようです。

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今回は民話やおとぎ話が中心となりましたが、もし今後同様の企画を立てる場合は、すこし趣向を変えてやってみたいです。(「ソビエトのアニメと絵本」「ロシアとクマ」「マルシャークとレーベジェフの世界」「アレクサンドル・グリンの生涯」などなど)

私個人的にも、大学で取り組んだロシア語と、絵本という二つのものを、文化祭の企画という一つの形にすることができたので嬉しいです。

とはいえ今後、文化祭の場で同様の企画を立てるかどうかは、一に企画者の卒業後の進路にもよってくるのでなんとも言えません。

ところで、このブログはもともと文化祭のために立てたものですが、今後もロシア関連で何か面白いネタが出来れば更新していく予定です。


(市川)

2015年11月21日土曜日

外語祭開催中

外語祭二日目が終わりました。これから土、日、月曜日の祝日と続くので、もっとお客さんも来て賑やかになるかな、と思います。

さて*ロシア絵本館*ですが、なんとか始まりました。

 
 
 
 ロシア語が分からないよという場合でも、絵や雰囲気などから伝わってくるものはあると思います。
 
 絵本といってもいろいろあるわけですが、ここでは昔話など、ロシアの民話を中心に集めています。
 
 こんな感じです。ちなみにテレビではソビエトのアニメが流れています。
 
 ちなみに、日本で出版されたロシアの物語もかなり用意しています。
 
 絵本と一緒に置いてあるおもちゃは、どれもロシアで入手したものばかりです。動物の置き物などは、フォークロアの世界を思わせる、ロシア風のデザインです。
 
 さて、展示に加えて、今回は朗読会を実施しようと思います。
 
 いずれも午後2時から30分程度。朗読するのは、ロシアの昔話、そしてアントン・チェーホフのごくごく短い短編小説です。チェーホフといえば戯曲で有名ですが、作家生活の初期には、短くユーモアのある滑稽話を書いていました。
 
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日程:11月19日(木)~11月23日(月・祝)

場所:東京外国語大学 研究講義棟3階 317教室

展示時間:12:00~17:00

朗読会は、21日(土)、22日(日)、23日(月・祝)の、14:00から、30分程度おこないます。お気軽におこしください。

※販売は行っておりません

(文:市川)
 

2015年11月14日土曜日

来週は外語祭

いままでアニメとか旅のことをのんびり書いてきましたが、そろそろイベントについて話そうと思います。

来週の木曜日(11月19日)から、外語祭が始まります。

外語祭とは東京外国語大学の文化祭。いろいろな言語を学ぶ学生たちが、外国料理店を出したり、外国語による劇を披露します。中国やドイツなど日本でも人気の国の料理から、ふだんなじみのない国のごはんまでいろいろあって、カラフルで楽しいお祭りです。

19日から23日(祝日)までの五日間、たっぷり開催します。場所がやや都心から離れてはいますが、行けば一日中楽しめる場所です。

詳しくはホームページ(http://gaigosai.com/)をご参照ください。
 
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で、私たちロシア語専攻4年の有志(通称ぞうのあし)は、「*ロシア絵本館*」というものをやります。
具体的には、

・ロシアの絵本の展示(日本語の解説あり。)

・日本でも出版された、懐かしのロシアのお話

・朗読会(日程および時間は下記参照)。ロシアのおとぎ話や、作家アントン・チェーホフの短編を読みます。もちろん日本語です。

展示している絵本は、ぜひ手にとって開いてみてください。ロシア語が分からないという方でも、イラストを見るだけでも楽しめると思います。
絵本の他にも、学生がロシア留学で集めてきた、おもちゃや雑貨をいろいろ集めました。
展示を通して、豊かなロシアの文化が感じられたらうれしいです。

料理店や語劇がてら、ぜひお立ち寄りください。
 
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日程:11月19日(木)~11月23日(月・祝)

場所:東京外国語大学 研究講義棟3階 317教室

展示時間:12:00~17:00

朗読会は、21日(土)、22日(日)、23日(月・祝)の、14:00から、30分程度おこないます。お気軽におこしください。

※販売は行っておりません

(文:市川)

2015年11月5日木曜日

モスクワ郊外の旅

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モスクワ郊外の旅
Путешествие по Подмосковью
 
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 今まで書いてきたモスクワ郊外の旅を目次にしてまとめました。


私が滞在していたのがモスクワであったこともあり、首都圏が中心となりました。しかしロシア第二の都市ペテルブルグからも、ツァールスコエ・セローやペテルゴフ、ガッチナなど、郊外の見どころがいろいろあるようです。

2015年11月4日水曜日

ズヴェニーゴロド ~ロシアのおやつ博物館~

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ズヴェニーゴロド ~ロシアのおやつ博物館~
Звенигород : Музей русских десертов
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 ズヴェニーゴロドには、アブラムツェヴォやクリンへ行ったときと同じロシア人の連れと行った。この町でメインとなる観光名所は、修道院らしい。だが、ロシアの友人は例によって観光地には興味ないらしく、代わりに「ロシアのおやつ博物館」というものを探し出してきた。
 ズヴェニーゴロド駅の前は田舎で何もないので、バスで中心部まで行く必要がある。
 中心部の印象はアンナ(モスクワ出身)曰く、「ごく普通のロシアの田舎町」とのこと。


かわいらしい土産物屋。

 しかしマクドナルドもあれば、最近ロシアではやりのお寿司屋さんもあって、田舎過ぎず、かといって都会過ぎずといった雰囲気。
 おやつ博物館は町のはずれにあり、探すのに少し手間取った。道を歩いていた人に聞いたところ、「私もそこに行きたいけど、なくて困っているんです」とのこと。
 とりあえず私たちは見つけた。あの人も見つけるといいな。
 「ロシアのおやつ博物館」では、このときパンの作り方教室を開いていた。そうとは知らずに入った私たちはびっくり。
 奥でパンをたたく音がするのをよそに、私たちは展示を見ていく。
 博物館は、ところせましにお菓子やかわいらしい食器が並べられた、一軒の田舎の家といったところ
 ちなみに、ロシアのお菓子といっても普通はイメージがつかないが、具体的にはこんなものがある。
 ・バランキ(硬い、輪の形をしたパン)
 ・プリャーニク(しょうがを使ったクッキー)
 ・パスチラー(リンゴを固めてつくった、大きなアメ)
 さきほど「私も博物館を探してる」と困っていた人も、この博物館の中で歩いているのを見かけた。みんなここにたどり着いて、めでたしである。
 この後は連れと一緒にお寿司屋さんへ。
 「スシバー」と言われるファーストフードの寿司屋は、ロシアの色んな都市で、2000年以降一気に増えたらしい。実際に町を歩いて行くと、寿司屋を含め日本料理の店がすぐに見つかる。
 ということで、今回をもって、モスクワ郊外の町についての紹介は終わり。モスクワ周辺には、電車で1、2時間程度で行ける、魅力的な郊外の町がたくさんあるということが伝えられたら、幸いである。
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◆ズヴェニーゴロドへの行き方◆
モスクワ・ベラルーシ駅(Белорусский вокзал)からズヴェニーゴロド駅(Звенигород)まで。時刻表をよく調べ、電車の方向をよく確認すること。所要時間一時間半。

2015年11月1日日曜日

クリン ~ツリーの飾り博物館へ~

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クリン ~ツリーの飾り博物館へ~
Клин : Музей ёлочных игрушек
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クリンという町には、ロシアの作曲家チャイコフスキーの家がある。なので、普通のガイドブックでは、「チャイコフスキーの家記念館」を紹介することが多い。

 この町には個人的な思いがある。私がロシア語を独学していた頃、教科書の一番最後の課に、このチャイコフスキーの家博物館(Дом-музей П.И.Чайковского)について書いてあった。ここでチャイコフスキーが住んで、創作していたこと、交響曲第六番を書いたということを、ロシア語で説明してある。そのエッセイが本の締めくくりだったということで、深く印象に残った。今でもときどき、そこに書いてあったロシア文の断片が頭に浮かぶことがある。


 そういうわけで、私はロシアに留学した以上、クリンに行くべきこと、チャイコフスキーの家を訪ねるべきことは心に決めていた。

 ところがこの旅についてきたロシア人の友人アンナは、チャイコフスキーの家には全く興味がない。その代り、「クリスマスツリーの飾り博物館」という、日本人じゃ思いつかない提案を出す。私がクリンに行く、と言ったら、インターネットで探し出してきたらしい。
 というわけでチャイコフスキーは置いておいて、クリスマスツリーを見に行くことになった。


クリスマスツリーの飾り博物館。
ツリーの飾り博物館は、学芸員のガイドによるエクスカーションのみを扱っているため、自由に歩いて展示品を見らえるような所とは違う。




 ロシアでは、クリスマスとお正月は同じ時期に一緒にお祝いする。ツリーももちろん出す。展示の内容は、昔のロシアからソ連を経て現代までの、ツリーの歴史を追っていくというもの。とちゅうで、職人が飾りを作っているところを、実際に見せてくれる。ガラスを熱して形をつくるところや、それに色を付けているところを生で見せてくれる。

 この後、「街をどうしても見たい」と言って、しばらく市内を歩かしてもらった。

 このクリンは市場がある。街の真ん中に赤いレンガの建物があって、商店が並んでいる。冬なので開いていないところ、さらに修理中のところもあったが、どこか独特の雰囲気がある。




携帯電話ショップがある。
建物自体は昔からあっても、中のお店は新しいので、
横浜の赤レンガ倉庫を思わせるところがある。

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◆クリンへの行き方◆

モスクワ・レーニングラード駅(Ленинградский вокзал)から郊外列車エレクトリーチカでクリン駅(Клин)へ。所要時間一時間程度。

2015年10月30日金曜日

セルプホフ ~暗闇の中で見た修道院~

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セルプホフ ~暗闇の中で見た修道院~
Серпухов
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 セルプホフ行きは完全な失敗で、なぜかというと電車に乗り遅れた。午前の電車に乗るつもりが間に合わなかったせいで、次の電車までの2時間を待たなければならなかった。その間はショッピングモールをうろついて、ユニクロのモスクワ支店を見たりしながら時間を潰す他なかった。

 郊外列車エレクトリーチカは、昼間は大きな休憩時間があるので、乗るときは時刻表をよく確認する必要がある。

 これと関係あるかないか、ロシアでは昼休みをとっている施設が多い。レストランも昼の間だけ閉まっていることがある。

 それは、日本やヨーロッパが正餐(ディナー)を夜に摂るのに対し、ロシアでは昼に行うことと関係があるのかもしれない。あんまり間違っていると恥ずかしいので、断言するのはやめておく。

 そういうわけで、電車で二時間もゆられ、過ぎていく時間に憂愁を覚えながら、セルプホフに到着した。駅に降りたころには、もう夕方の4時。

 さてこの後も大変である。歴史地区まで行きたいわけだが、セルプホフは比較的に町が大きいので、車などで移動しないと、歩く距離が非常に多くなる。だが私は電車できたぐらいなので車など持っていない。だから、歴史地区まではバスでの移動である。


駅前のお店。正直なところ古くて汚い場所が多いが、
その古くて汚いところにどこか懐かしい感じがある(失礼)。
こういうよくある光景がずっと残っていてほしい

 そしてバスがなかなか来ない。日本もそうだが、田舎のバスは一時間に一本来れば良い方である。実際このときは、一時間待てば来る、「良い方」のバスだったわけだが、それでもバルに乗り込む頃には、すでに夕方五時。ロシアの冬は、一日が非常に短いので、4時にもなれば暗くなりはじめ、5時にはすっかり夜である。

 こうして、バスに乗りながら暗くなった外の景色を、悲しい気持ちで眺めていた。けれども、せめてセルプホフに来たからには、修道院は見てみたい。

 そういうわけで修道院に着いた。

 さて空は真っ暗であるから、修道院もよく見えない。わずかに、雪の照り返しでうっすら白い壁が見える。

 古い言葉で「蛍雪の功」というのがある。蛍の光や、窓の雪の光で、夜も勉強に励んだ人の成功を指す成句だが、実際に雪によって光が生じるのを、これほど実感したのはこの時ぐらいである。

奥にうっすらと、修道院の壁や、尖塔が見える。

デジカメを夜景用に設定するも、手がブレるせいでまともに撮れない。

 ところで今まで書かないでおいたが、冬のロシアだからえらい寒さである。バス停で一時間待ったなどと書いたが、その間も風吹の中を待っていたわけである。電車やバスの時間をよく見ておかないと、こんなところでも大変な被害を受ける。

 修道院も外は寒い。私は、お寺に対する敬意を忘れずに中を見学する。すると天国かな、非常に暖かい。ロシアは建物の中を暖めるにかけては素晴らしい。

 その時は夕方の祈祷が行われていた。セルギエフ・ポサードで見た様な、祈りの言葉を聞きながら、信徒たちの十字を切る姿を見ていた。

 祈祷は長く続いたが、私は途中で外に出た。暗闇の中にそびえる修道院。街灯は一つもない。中世のロシア人も同じくらいの暗闇の中で、教会の白壁や丸屋根を見上げていたろうか。

 つまるところ、私のセルプホフ行きは、暗い中でこの修道院を見たという話に尽きるから、いささかも町の魅力を理解できず、また伝えることもできないのが遺憾ではあるが、しかし旅行先として楽しいのはたしかなので、ここに記事をものした次第である。


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セルプホフへの行き方

モスクワ・クールスク駅から郊外列車エレクトリーチカでセルプホフへ。所要時間一時間半~二時間。

2015年10月27日火曜日

ザライスク ~バスで行った小さな町~

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ザライスク ~バスで行った小さな町~
Зарайск : поездка на автобусе
 
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 今まではすべて電車での旅行でしたが、今回は電車が通っていない町に行きます。移動手段は長距離バスです。

 地下鉄のヴィーヒノ駅前にあるバスターミナルで、バスの切符を購入し、正しい番号のバスに乗ります。終点までなので、途中でバス停を乗り過ごす心配はありません。

 バスの窓からは、広く、何もない平原が見えます。
 
 
 なんだかずいぶん田舎に行くような気分ですが、しかししばらく車に揺られていると、やがて家が見え始め、マクドナルドの看板まで見えてきて、終点のザライスクに到着。 
 
ザライスク観光(1) ~クレムリン~
 
 バスターミナルのすぐそばにクレムリンが見えます。
 

モスクワの赤の広場に、ミーニンとポジャールスキーの像がありますが、
ザライスクは後者のポジャールスキーとかかわりがあります。

教会や博物館があります。
博物館には、むかしのロシアの貴族が集めていたという、
日本の骨董品があります。日本刀もありました


ブランコ。
 
ザライスク観光(2) ~聖なる源泉~
 
 クレムリンを見た後は、町の通りに沿って散歩します。といっても、ザライスクはとても静かな町なので、通りをあるいても、木造の民家が続くばかりです。
 
ごくふつうのロシアの田舎の家です。

 ガソリンスタンドまできたら、左折します。 
 
草原が見えます。
 ここで、二つ目の観光スポットを見つけます。 聖なる源泉と呼ばれる井戸からは、水が流れ、オショートル川にそそがれます。
 
看板があり、
 
こんな風に進んでいく先には沐浴所があります。
 
沐浴所
 ザライスクは静かでとても小さな町ですが、歴史的な遺跡や記念碑、博物館なども多く、とても面白い場所です。
 
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◆ザライスクへの行き方◆
 
地下鉄ヴィーヒノ駅(または郊外列車のヴィーヒノ駅)にあるバスターミナルから、ザライスク行きのバスに乗る。片道二時間ほど。
(文と写真:市川)

2015年10月25日日曜日

アブラムツェヴォ ~芸術家の村~

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アブラムツェヴォ ~芸術家の村~
Абрамцево
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 なんでも、芸術家たちが集まって、切磋琢磨しあった場所らしい、というおぼつかない知識だけで向かったのが、アブラムツェヴォの博物館である。

 後から入れた知識だと、ここはもともと作家アクサーニコフの領地であったが、19世紀後半にはマーモントフというお金持ちが買い取った。

 このマーモントフというのは芸術家のパトロンである。いろんな芸術家にお金を出すことをしていた。別荘だったアブラムツェヴォ村には、画家や文学者たちが招かれ、やがて村は、有名な芸術家村となっていく。

 ここで活動した芸術家の一派はアブラムツェヴォ・サークルと呼ばれた。画家でいうと、このブログでもたびたび絵を紹介したV・ヴァスネツォフとその兄弟、ヴルーベリ、セローフ、レーピンなどなど。

 現在は博物館となっており、公園のようになった敷地内に展示場や建物がいくつか並んでいるという趣きであった。

古いロシアの田舎の家をイメージしている

 アブラムツェヴォへは、ロシア人の連れ合いと共に向かった。12月の冬場で、ほとんど観光客の訪れない時期であったから、ひっそりしている。


池が凍っている。

 ここに向かったのも、実はそのロシア人の連れ合いというのが、館員と知り合いであったためである。この館員はモスクワ市在住だが、平日は、この博物館まで片道一時間半以上かけて出勤していた。いまは労働環境を改善したかったとかで、自宅で働いているらしい。

 展示を見た全体の印象から言うと、アブラムツェヴォでは、ロシアの自然やフォークロアを題材にした絵画、伝統的な工芸品や民芸品、さらにイコンなどが作り出されていたようである。近代のある時期の画家たちには、古い時代のロシアに回帰するような傾向があったのかもしれない。

これは博物館の外にあるホテルの前なのだが、
バーバ・ヤガーのモニュメントがある。
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アブラムツェヴォへの行き方

モスクワ・ヤロスラブリ駅(Ярославский вокзал)から郊外列車エレクトリーチカでアブラムツェヴォ駅(Абрамцево)まで行った後、乗り合いタクシー(マルシルートカ)に乗る。
( 文と写真:市川)

2015年10月23日金曜日

アレクサンドロフ ~歴史ドラマの舞台~

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アレクサンドロフ ~歴史ドラマの舞台~
Александров
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 ロシアの皇帝に、イワン雷帝というのがいます。

 カザン征服など有能な面を見せましたが、一方でお妃の死をきっかけに精神を病み、多くの家臣を殺し、数えきれないほどの人々を処刑や拷問にかけた残忍な人物でした。

 モスクワのトレチヤコフ美術館には、イワンが息子を殺害する一場面を描いた有名な絵画があります。

 そのイワン雷帝が17年間近く居を構え、事実上のロシアの首都ともなっていたのが、アレクサンドロフです。

 皇帝が住んでいた16世紀のアレクサンドロフは、リームスキー=コルサコフのオペラ『皇帝の花嫁』の舞台となっています。

 この町は厳密に言うとウラジーミル州にあるため、いわゆる「モスクワ郊外」と呼ばれるモスクワ州の町とは違うのですが、それでも電車で2時間程度なので、日帰りは十分可能です。

 さて、首都モスクワから郊外列車に乗ってアレクサンドロフ駅に到着し、20分ほど歩くと、目的の博物館「アレクサンドロフスカヤ・スラボダー」が見えます。

 壁で囲まれた敷地の中に教会や、展望台、宮殿、博物館があります。見どころはいっぱい。一日かけて残らず見ることをお勧めします。

入口。
この年は、10月に雪が降りました。
ロシアとはいえ10月の降雪は珍しいそうです。
白い壁が中世の雰囲気を出しています。
中に入ると、映画「イワン4世」の中にあるような、古いお城の造りになっています。
昔の時計。

 小学生が遠足で大勢きています。先生が博物館の中で引率して、なにか説明をしています。前のほうではちゃんと聞いていますが、後ろの列ではふざけていたりして、日本とあんまり変わらない。

展望台から。
展望台から(2)。
きれいな場所です。

 敷地の中には木の家があって、そこには猫が住み着いていたり、親切な館員の人に説明してもらえたりします。

 ちなみに展示内容自体は、中世から近代まで幅広いので、さまざまな場所を歩き回ってもあまり飽きないと思います。

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 博物館から駅まで戻る途中で、偶然、マリーナ・ツヴェターエワの家博物館を発見しました。マリーナ・ツヴェターエワとは20世紀のロシアの詩人で、技巧を凝らした作品で知られます。私は大学では、ツヴェターエワが好きな先生のもとでロシアの詩を勉強し、ツヴェターエワの伝記も読んだのですが、内容をすっかり忘れてしまいました。こんなところで「ツヴェターエワの家」とかかれた看板を見つけ、アレクサンドロフとゆかりがあったなんて、と不意打ちをくらった気分です。

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◆アレクサンドロフへの行き方◆

 モスクワ市内・ヤロスラブリ駅(Ярославский вокзал)から、郊外列車エレクトリーチカで、アレクサンドロフ駅(Александров)まで。二時間ほど。
(文と写真:市川)

2015年10月21日水曜日

モジャイスク ~牛乳とクレムリン~

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モジャイスク ~牛乳とクレムリン~
Можайск : Кремль, молоко...

 
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 モジャイスクという町にもクレムリンがあります。ただし、今までのドミートロフやコロームナとは違い、ただ門といくつかの壁や教会があるだけで、本当にひっそりとしています。

住宅地の中にひっそりとたたずむ門。

中は草木の生える公園。市民の憩いの場になっている。
地形上、クレムリンは丘の上にある。崖からは、このように郊外の村が見える。
あるロシア人の教師いわく、「モスクワは外国人の入り乱れる現代都市で、もはやロシアではない。もし本当のロシアの姿を見たければ、電車で一時間や二時間郊外に出ていく必要がある」とのこと。この先生の言葉に従うなら、ロシアのいろんな姿を見るという意味で、郊外への遠出はとても意義深いことだと思います。

 ちなみにロシアの本当の田舎は電気すら通っていないらしいので、モジャイスクどころではないようです。

 他にこの街には、立派な修道院や教会などがあるようなのですが、そこには行けませんでした。

 これまでは、歴史的地区の散策でした。日本でもロシアでも、何か一つの街を見る場合、ときどき「歴史的中心」と「経済的中心」が離れている場合があります。駅や商店街、仕事場など経済活動が集中している場所と、古い建造物など歴史的な名勝が集まる場が、離れていることがあるからです。
 
 ところで、モジャイスクは、「英雄の町」という異名を持っています。それは、近い過去に戦場となり、ロシア人が勇敢に戦ったためです。第二次世界大戦のとき、モスクワを目指す敵の侵入を防ぐため、壁となったのが、モジャイスクでした。それゆえ、戦死者をたたえる記念碑がいくつもあります。

中心に見える赤い炎は、「永遠の火」と呼ばれる。
ロシアの多くの戦争記念碑に置かれている。
それは一年中消えることがない。

 ちなみにモジャイスクは牛乳を作っているところらしく、屋台で「モジャイスクの牛乳」として売っています。おみやげに買うと良いと思います。腐りますが。

日本でいうコンビニがない代わり、外国の町では屋台がいっぱいある。

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◆モジャイスクへの行き方◆

モスクワ・ベラルーシ駅(Белорусский вокзал)から郊外列車エレクトリーチカで、モジャイスク駅(Можайск)へ。2時間程度。
(文と写真:市川)