2017年10月28日土曜日

「イワン・クパーラ前夜」

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「イワン・クパーラ前夜」
Вечер накануне Ивана Купала
作:N.V.ゴーゴリ
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ひさしぶりの更新。
今回ご紹介するのは、「イワン・クパーラ前夜」という物語です。

イワン・クパーラという言葉、なんだか響きが面白いですが、これはロシアやウクライナの夏のお祭りです。夜には焚火を焚いて、キャンプファイヤーをやったり、焚火の上をジャンプして飛び越えたりします。

で、そんなイワン・クパーラの夜に、ウクライナの小さな村で起こった不思議な出来事が、この物語です。


村にある日から悪魔が出没し、宝石やお金、お酒などを渡して人々を惑わします。
実はその贈り物はみんな呪われていて、受け取った人は災難に遭います。

主人公のペトローは貧しく、好きだった村娘も、金持ちにめとられてしまいました。
悲しみにくれている中、ちょうどイワン・クパーラ前夜、悪魔が金貨の山をちらつかせて、ペトローに話を持ち掛けるのです・・・

作者はゴーゴリ。連作短編集『ディカニカ近郊夜話』のうちの一篇です。
悪魔、魔女、幽霊、怪奇現象の連続するこの本は、ハロウィーンも間近の今の時期、秋の夜長にぴったりだと思います。

ちなみに、ロシアではハロウィーンはあまり一般的には祝っていません。

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前回、同じ短編集の中の別の作品を絵本にしたことをブログで書きましたが、
今回も絵本にしました。


ウクライナの村の風景。

お祈りする人々。
民族楽器の名前など、難しい言葉には注釈をつけました。

販売の予定はありませんが、何冊か印刷して友達などにプレゼントしようと思います。
展示する機会があればいいのですが。

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ソ連時代に映画が作成されました。Youtubeで見られます
(市川)

2017年3月19日日曜日

ロシアとディズニー

久しぶりのブログ更新になります。
今回は、ディズニー映画『モアナと伝説の海』にからめて、ディズニー映画について書こうと思います。

ディズニーの映画は世界中で人気です。
『アナと雪の女王』のテーマソングも、世界中のいろいろな言語で歌ったのをミックスしたバージョンがユーチューブで聴けて、いかにさまざまな言葉に翻訳されているかということが分かります。

「ありのままの姿見せるのよ♪」で有名な例の歌、ロシア語版ではこうです。

Отпусти и забудь. Что прошло - уже не вернуть.
アトプスチー・イ・ザブーチ。シトー・プラシロー・ウジェー・ニ・ヴェルヌーチ。
「手放しなさい、そして忘れなさい。過ぎたことはもう取り返せない。」

歌詞の内容は全体として、「私はこれから女王になるのだ。過去のことは捨てる。女王になるのだからどんな困難にも負けないよう強くなってみせる」という、たくましいものです。

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もちろんロシアでもディズニーの映画はとても人気です。新作映画は毎年上映されますし、
私がロシアに滞在していたころも、『美女と野獣』のミュージカルを見にいきました。

しかし、ロシアではディズニーの映画が嫌いな人が一定数いるようです。

ロシア人に聞いてみても、ソ連時代はディズニーは公開されていなかったといいます(ただし、ミッキーやミニーのTシャツはあったので、ミッキーマウスモノだけは許可されていたかも)。
ディズニーはもともとアメリカのものであり、そこにはアメリカのあらゆる悪(資本主義、人間の欲望、堕落などなど)が現れているものなので、ソ連では公開されていなかったのではないか...と思うのですが。

ただしソビエトでは、ディズニーに追いつけ追い越せと言わんばかりに、質の高いアニメーションが作られていましたし、どのようなものがあったかはこのブログで過去にご紹介しました。

さて、ソ連が崩壊した現在でも、ディズニーを批判する人というのはいるわけです。
現在、『美女と野獣』の実写映画が公開されていますが、それが賛否両論を呼んでいます。
なんでも、そこにはゲイの男性(と思われる人物)が登場するために、ロシアでは議論が巻き起こったのです。

ロシアでは同性愛者は非常に嫌われていて、性的少数者への差別は公然と行われています。
最近では、青少年に対し同性愛のプロパガンダを禁止する法律が施行されたこともあり、
この『美女と野獣』を公開するかどうかでも、だいぶもめました。

この件をきっかけとして、インターネット上では、ディズニーの悪口を言う人たちも増えて、
ディズニー映画には、ロリコンをはじめとして様々な「けしからん」形の恋愛が描かれている、と非難が現れました。

ロシアにいる私の友達は、この映画を見に行きたいようですが、もしかしたら子供なんかは劇場に入れてもらえないかもしれないなどと言っていました。後で聞いた話だと、子供も入らせてもらえるそうです。

ロシアで同性愛者が嫌われている原因には、宗教的な理由も歴史的な理由もあるので、かなり根が深い問題です。
(市川)