2016年7月31日日曜日

ロシア語で歌われた『恋のバカンス』


* * * *
『恋のバカンス』
"Каникулы любви"
* * * *

今年の5月に、双子デュオ「ピーナッツ」の伊藤ユミさんが亡くなりましたが、
ピーナッツの代表的な歌に『恋のバカンス』というのがあります。

この恋のバカンス、実はロシアでは有名な曲なのです。
あちらでのタイトルは、Каникулы любви(カニークルィ・リュブヴィー/恋のバカンス)。
いま書いたロシア語のタイトルで検索すれば聴けます。
歌詞の内容にも大きな違いはありません。

私の大学時代、ロシア語の授業で、先生がラジカセでこの曲をかけながら、「これはロシア人の感性に非常によくあっているのです」と言ったのを覚えています。それから、「ロシア人の心にしっくりくるあまり、ロシアの曲だと思っている人もいるくらい」。
実際、私のロシア人のツレは、この歌が日本の歌だということを知らなくて、驚いていました。

それにしても、海でのバカンスを歌った曲が、寒いロシアという国で有名になったのは、なんででしょう。
単なるエキゾチズムというより、ロシアの人々が抱く、海や、海でのバカンスにかける思いなども関係してくるかもしれません。

意外かもしれませんが、ロシアは夏はけっこうな暑さになります。モスクワやペテルブルグ、シベリアでも川や湖で水浴びをするのが人気です。

しかしなんといっても海は憧れ。ロシア人にとっての夏休み最高の過ごし方は、クリミアのような浜辺にいって、海水浴をすることではないか、と私は思います。俗っぽくいえば、これがもっとも「リア充」な夏休みです。

* * *

『恋のバカンス』がどうやってロシアで広まったのかの詳しい話や、前回ブログで書いた『百万本のバラ』の秘密については、この本に書いてあります。

山之内重美『黒い瞳から百万本のバラまで ―ロシア愛唱歌集(ユーラシアブックレット)』東洋書店

(市川)

2016年7月17日日曜日

『百万本のバラ』はロシアの歌


* * * *
『百万本のバラ』
"Миллион алых роз"
* * * *

『百万本のバラ』といえば、歌手の加藤登紀子さんが歌っている曲です。

貧しい画家がいて、女優に恋をし、有り金をはたいて百万本のバラをプレゼントするが、
恋はかなわない、という歌です。

実は、これはもともとロシアの歌謡曲です。

* * *

ロシアでは、ソ連時代にアーラ・プガチョーワという歌手が歌ったのですが、あちらでもかなり有名な曲なのです。

このアーラ・プガチョーワは、年齢的には中年ですが、芸能人だけあって見た目が若いです。今でもロシアの芸能界では影響力を持っているようで、向こうのタブロイド紙なんかでも写真がデンと一面に載っていたり、なんというか大御所のオーラをかもしだしています。

* * *

『百万本のバラ』の、ロシア語でのタイトルは、『ミリオーン・アールィフ・ロース』といいます。
ミリオーンは英語のmillionと同じ、最後のロースも英語のroseと一緒です。
真ん中の「アールィフ」というのは、赤い、という意味なのですが、赤の中でも鮮やかなものを指し、「真っ赤」「真紅」という意味で使う、詩的な言い方です。

くしくも、前回のブログで『紅い帆(アールィエ・パルサー)』という小説を紹介しましたが、そこでも同じ単語を使っています。

* * *

ところで、日本語の『百万本のバラ』で知られる加藤登紀子さんですが、最近テレビで見た情報では、新宿にあるロシア料理レストランのオーナーでもあるそうです。

なんでも、もとは加藤登紀子さんのお父さんが50年以上前に開いたお店で、昔は白系ロシア人のコックさんが、故郷の味をふるまっていたとのこと。

こんなところでロシアとのつながりがあったことが、やがて、あのヒット曲を歌うことにつながったのかもしれません。

ちなみに日本にはロシア料理のレストランがけっこうあるので、探してみると意外と近所にあったりします。

(市川)